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 ■「文春裁判」も全局がスルー

こうしたテレビ局の“右へ倣え体質”は昔も今も変わらず。20年前の「文春裁判」の判決確定の際、日刊ゲンダイは、2004年2月28日付紙面で「ジ****のセクハラ裁判をほおかむりするテレビ局の腰砕けぶり」の見出しで、芸能評論家の肥留間正明氏(今年2月に逝去)の「芸能界でホモセクハラが裁判になったのは異例。真実と認められたのも初めてで、これは社会的な事件」というコメントとともに報じたが、テレビ局は完全スルー。

この“右へ倣え”のスタンスが被害の拡大につながったことをテレビは猛省して自己検証すべきだ… 
 エンタメ業界の性加害、日米の社会的制裁の違い  ジャニーズ社名変更なしはアメリカではありえず|映画・音楽|東洋経済オンライン https://toyokeizai.net/articles/-/702143?display=b 

2023/09/16 11:30

故ジャニー喜多川氏の性加害問題をめぐるジャニーズ事務所の会見では、社名は変更せず、新社長には長年の所属タレントである東山紀之氏が就任することが発表された。

アメリカでは、6年前、ハーベイ・ワインスタインの性加害が「The New York Times」と「The New Yorker」によって暴露されたことをきっかけに「#MeToo」運動が起こり、権力を握っていた数々の男性がハリウッドを追放された。ジャニー喜多川氏は故人であり、状況に違いはあるものの、当時のアメリカの会社の対応を改めて振り返ってみたい… 
 まずは、ザ・ワインスタイン・カンパニー(TWC)。ミラマックスの創設者ハーベイ&ボブ・ワインスタイン兄弟が、2005年に新たに立ち上げた会社だ。TWCの代表作には、オスカー作品賞に輝いた『アーティスト』、ジェニファー・ローレンスに主演女優賞を与えた『世界にひとつのプレイブック』、ヒット映画『パディントン』などがある。
 
 
暴露記事発覚の2日後にクビ

ハーベイ・ワインスタインはミラマックス時代から「オスカーを牛耳る男」として知られる、ハリウッドのパワープレイヤーだった。

だが、暴露記事ですべてがあっという間に変わった。「The New York Times」の記事が出たのは、10月5日。翌日には、TWCの役員の3分の1が辞任し、ワインスタイン本人も無期限の休職に入ると発表した。それでも本人はまだなんとかなると思っていたようだが、翌7日、ワインスタインは、自分が創設し、自分の名前を冠した会社からクビにされてしまったのだ… 
 9日になると、役員らは、ワインスタインの名前をすべての映画とテレビのクレジットから外すと発表。社名変更をするために広告会社を雇おうとしていることも報道された。

業界サイト「Deadline.com」は、「ひとつのブランドとなった彼の名前から距離を置くことは、TWCが生き延びるために最も重要なこと。このブランドは今や毒なのである」と書いている。たった4日間でここまで進んだのだ。

それでも十分ではなく、会社を丸ごと、あるいはばらばらにして売るしかないと、関係者のほとんどはこの段階でわかっていた(共同創設者であるボブ・ワインスタインだけは、その選択を拒否した)。TWC創設時に融資し、株主でもあるゴールドマン・サックスも「報道されたような行為には言い訳の余地がない。我々は強く非難する」と声明を発表し、早々と関係を断っている… 
 その後まもなくTWCを買いたいという会社、人物が複数現れた。そのうちのひとりで、過去に銀行を創設した経歴を持つマリア・コンテレラス=スウィートは、自分がトップに立ち、役員のほとんども女性が占める形で組織を完全に改編する計画を提案。彼女ももちろんのこと、買収を希望した中にTWCの社名を残すつもりだった会社や人物はまったくいない。

しかし、結局買収は成立せず、このスキャンダルの前から多くの負債を抱えていたTWCは各方面から訴訟されて、経営破綻。最終的にランターン・キャピタルが買収し、ランターン・エンタテインメントの社名で新たな出発をすることになって、TWCの名前は完全に消えた… 
 「全ての権利は太陽系全域において、事務所に独占的に帰属する」だって!?... ジャニーズ事務所の「専属契約書」の中身が予想の遥か上だった(週刊現代)|現代ビジネス|講談社(1/2) https://gendai.media/articles/-/116246

2023.09.16
 
 
 
そんななか、今回本誌が入手したのは、同事務所と所属タレントが結ぶ「専属契約書」である。この契約書から垣間見えるのは、性加害とは異なる、ジャニーズの別の暗部だ。

「専属契約書」からまずうかがえるのは、ジャニー氏が芸能界で、タレントと共に見ていた壮大なビジョンである。

第2条にはこう記されている。

〈乙(タレント)は甲(ジャニーズ事務所)に対し、日本を含む全世界を包含する太陽系全域における芸能創作活動のために第三者と交渉・協議する権限を与え〉(丸括弧内は引用者、以下同)

ジャニーズタレントの活動の舞台は、120億kmの広がりを有する太陽系全域を想定しているらしく、事務所側もそうした視点で仕事を獲得するというのである… 
 さらに、所属タレントによる歌やパフォーマンスが生みだす著作権に関しても、その権限は「太陽系」に及ぶとされる。

〈乙の芸能創作活動に関連して生ずる著作権法の全ての権利は、日本を含む全世界を包含する太陽系全域において(中略)甲に独占的に帰属し、甲は自由に利用及び処分できる〉(同第6条)

一連の性加害報道を受け、今後、ジャニーズタレントは、人権感覚に鋭敏な海外で活動する道が閉ざされたという指摘がある。だが、ジャニーズ事務所にとって、そもそも”世界”は眼中になかったのである… 
 「売上の75%が事務所の取り分、残り25%をメンバー人数で配分する」「契約破棄もできない!?」...性加害問題に続くジャニーズ事務所の「専属契約書」問題(週刊現代)|現代ビジネス|講談社(1/6) https://gendai.media/articles/-/116247

2023.09.16
 
 
 
この契約書の問題点は、まだまだある。事務所側の権利を定めた条文が多い一方で、タレント側の権利を明記した条文がほとんど見られないのだ。

タレントと芸能事務所との契約に詳しい竹村公利弁護士はこう語る。

「当該の契約書において懸念されるのは、一般的な専属契約で通常規定されている契約期間の定めが見当たらないこと。契約の解除事由についての規定もないことから、事務所がタレントの退所を前提とした話し合いに応じないことも考えられる」

くわえて、同事務所を辞める際の法的な根拠となる条文も設けられていない。つまり、今回のように事務所側の不祥事が発覚しても、そのことを理由にただちに契約を破棄することはできないということだ… 
 事務所から独立するための根拠とできそうなのは、

〈双方の長期的な利益の増進に適う芸能創作活動に従事させる事に努めることを約し〉

とした第3条だが… 
 「この文言や信頼関係の破壊を根拠に、事務所側がタレントのイメージを毀損したとして、契約解除を主張することが考えられる。ただ、その判断は最終的には裁判に委ねられます」(同前)

また、第4条では、

〈(タレント側が)芸能創作活動に関して第三者といかなる契約をも締結したり、締結のための交渉をしてはならない〉

と定められている。労働問題に通じた柏田剛介弁護士は、この条文が、タレント側の自由な移籍を妨げる可能性があると指摘する。

「この条文が成立するならば、ジャニーズ事務所に所属しているタレントは、別の芸能事務所との間で、新しいマネジメント契約を視野に入れた交渉もしてはならないということになる。したがって、職業選択の自由などタレント側の権利を侵害する可能性があるのです」

専属契約書によって、ジャニーズ事務所がタレント側の権利を制約する一方、冒頭の志賀氏の証言によれば、少なくとも'90年代前半までは、こうした契約書すら存在していなかったことになる。事務所側に”スキャンダル”を正直に打ち明けた志賀氏は、メリー氏によって一方的に「契約」を破棄されているのだ… 
 その横暴さは、報酬(ギャラ)の支払いに関して一層はっきりと表れていた。志賀氏が明かす。

「私たちの時代は、事務所との間で専属契約はなかったのですが、子会社の(音楽著作権管理を担う)ジャニーズ出版との間で契約書を交わしていました。そのなかでギャラに関しては、固定給か、歩合か、月10万円と歩合の混合のいずれかを選ぶことができた。忍者は混合制を選び、レコードやCDの売り上げに応じた印税収入も受け取っていました」

ところが印税収入に関しては、忍者のメンバーに、CDなどが何枚売れたかという数字が伝えられることなく、カネだけが振り込まれていた。一方で、テレビ番組などに出演した際の報酬は、ジャニーズ事務所から支払われていたという… 
 「出演料に関しても、番組名ごとの金額が記された明細などは見たことがありません。数ヵ月おきにまとまったお金が振り込まれて、受け取った私自身も『これ、どの仕事のギャラだろう』と困惑した。あるときマネージャーが、事務所が売り上げの9割をもっていき、残りを6人のメンバーで分けあったものが私たちのギャラだと漏らしたこともある。私たちの時代は無茶苦茶だった」(同前)

本誌が入手した「専属契約書」は、平成の時代に活躍した誰もが知る人気アイドルが事務所との間で結んだものだ。報酬に関する条文は次のようになっている。

〈芸能創作活動によって第三者から取得する報酬等は、次項以下に定めるものを除き、必要諸経費として50%を控除し、その後の50%を甲(ジャニーズ事務所)の収入とし、同じく50%を乙(タレント)の収入とする。ただし、乙がグループの一員である場合は、その構成人数按分した金員とする〉(第5条)

つまり売り上げのうち、事務所側が75%を手にするのに対して、タレントの報酬として支払われるのは25%ということになるのだ。また、グループの場合は、25%の取り分をメンバー同士でさらに分け合うことになる… 
 こうした実態は、不当な金銭的”搾取”ではないのか。前出の竹村弁護士は次のように語る。

「仕事の売り上げから事前に経費を差し引いたうえで、タレントへのギャラを支払う芸能事務所もあります。しかし、一律50%の経費が控除されるとの規定は、諸経費の相当性や報酬配分について所属タレントと争いになる可能性はある。支出した経費が相当性を欠いているような場合は、タレントが事務所に対し、専属契約の債務不履行または有効性に疑義があるとして契約解除や無効を主張することも考えられる」… 
 芸能界の慣習から見ても、売り上げから経費を50%差し引くことはおかしいという声がある。芸能プロダクションの代表が言う。

「大手芸能事務所では、仕事の売り上げに対して、10万円程度の衣装代やメイク代を差し引き、残りを事務所側とタレント側で50%ずつ分けるケースが多いと聞きます。

衣装代を引かずに、売り上げをそのまま等分する場合もある。経費に関しては、先方から請求書がスムーズに発行されないことも多く、正確な金額が確定するのに時間がかかる。そこで、事務所側がタレントへ迅速にギャラを支払うために、経費を差し引かずに売り上げを等分する。このほうがタレントにとってもわかりやすいのです」… 
 ジャニー氏による性加害に関しては、外部専門家の調査報告書で、ジュニアの採用からデビューまで、プロデュース全般を担当したジャニー氏の絶対的な権限が背景にあったと指摘されている。

一方、デビューを果たしたタレントたちが、専属契約書に示された金銭的”搾取”の状態を改善しようとした場合も、事務所が絶対的な存在として立ちはだかったという。ジャニーズ事務所の関係者が明かす。

「専属契約書は、デビュー時に一度サインをすると、その後も自動的に更新される仕組みになっていました。そのためタレント側が人気や活動実績を踏まえて、報酬などの条件を変更しようとしても、ジャニーズ事務所側は一切交渉に応じないという姿勢でした」…