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 その横暴さは、報酬(ギャラ)の支払いに関して一層はっきりと表れていた。志賀氏が明かす。

「私たちの時代は、事務所との間で専属契約はなかったのですが、子会社の(音楽著作権管理を担う)ジャニーズ出版との間で契約書を交わしていました。そのなかでギャラに関しては、固定給か、歩合か、月10万円と歩合の混合のいずれかを選ぶことができた。忍者は混合制を選び、レコードやCDの売り上げに応じた印税収入も受け取っていました」

ところが印税収入に関しては、忍者のメンバーに、CDなどが何枚売れたかという数字が伝えられることなく、カネだけが振り込まれていた。一方で、テレビ番組などに出演した際の報酬は、ジャニーズ事務所から支払われていたという… 
 「出演料に関しても、番組名ごとの金額が記された明細などは見たことがありません。数ヵ月おきにまとまったお金が振り込まれて、受け取った私自身も『これ、どの仕事のギャラだろう』と困惑した。あるときマネージャーが、事務所が売り上げの9割をもっていき、残りを6人のメンバーで分けあったものが私たちのギャラだと漏らしたこともある。私たちの時代は無茶苦茶だった」(同前)

本誌が入手した「専属契約書」は、平成の時代に活躍した誰もが知る人気アイドルが事務所との間で結んだものだ。報酬に関する条文は次のようになっている。

〈芸能創作活動によって第三者から取得する報酬等は、次項以下に定めるものを除き、必要諸経費として50%を控除し、その後の50%を甲(ジャニーズ事務所)の収入とし、同じく50%を乙(タレント)の収入とする。ただし、乙がグループの一員である場合は、その構成人数按分した金員とする〉(第5条)

つまり売り上げのうち、事務所側が75%を手にするのに対して、タレントの報酬として支払われるのは25%ということになるのだ。また、グループの場合は、25%の取り分をメンバー同士でさらに分け合うことになる… 
 こうした実態は、不当な金銭的”搾取”ではないのか。前出の竹村弁護士は次のように語る。

「仕事の売り上げから事前に経費を差し引いたうえで、タレントへのギャラを支払う芸能事務所もあります。しかし、一律50%の経費が控除されるとの規定は、諸経費の相当性や報酬配分について所属タレントと争いになる可能性はある。支出した経費が相当性を欠いているような場合は、タレントが事務所に対し、専属契約の債務不履行または有効性に疑義があるとして契約解除や無効を主張することも考えられる」… 
 芸能界の慣習から見ても、売り上げから経費を50%差し引くことはおかしいという声がある。芸能プロダクションの代表が言う。

「大手芸能事務所では、仕事の売り上げに対して、10万円程度の衣装代やメイク代を差し引き、残りを事務所側とタレント側で50%ずつ分けるケースが多いと聞きます。

衣装代を引かずに、売り上げをそのまま等分する場合もある。経費に関しては、先方から請求書がスムーズに発行されないことも多く、正確な金額が確定するのに時間がかかる。そこで、事務所側がタレントへ迅速にギャラを支払うために、経費を差し引かずに売り上げを等分する。このほうがタレントにとってもわかりやすいのです」… 
 ジャニー氏による性加害に関しては、外部専門家の調査報告書で、ジュニアの採用からデビューまで、プロデュース全般を担当したジャニー氏の絶対的な権限が背景にあったと指摘されている。

一方、デビューを果たしたタレントたちが、専属契約書に示された金銭的”搾取”の状態を改善しようとした場合も、事務所が絶対的な存在として立ちはだかったという。ジャニーズ事務所の関係者が明かす。

「専属契約書は、デビュー時に一度サインをすると、その後も自動的に更新される仕組みになっていました。そのためタレント側が人気や活動実績を踏まえて、報酬などの条件を変更しようとしても、ジャニーズ事務所側は一切交渉に応じないという姿勢でした」…