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 ーー数値的な異常がない場合は「心臓神経症」の可能性?

胸の痛みを訴えて我々の外来に来る患者さんの30~50%も、異常所見がない場合があります。

心臓の専門の施設で調べても、やはり30~50%の人は、心臓の血管や心臓の超音波や負荷試験に異常無しと出ます。

ですから、心臓そのものにトラブルがなくても、なぜか心臓の痛みが起こるケースは少なくありません。どちらかというと、我々のような町医者の診る患者さんでは、実際に心臓の血管が狭くなっている「狭心症」の例は少なく、半分以上は心臓に問題のない患者さんです。

従って、降谷さんの場合も、心臓血管の流れ、心電図、心エコー、造影CT、シンチグラフィーなどさまざまな精密検査をやっても数値上の異常が見られないなら、おそらく心臓神経症の可能性が高いのかなと思います。

ただ、心臓神経症に極めて類似した、「異型狭心症」(別名:冠攣縮性狭心症・かんれいしゅくせいきょうしんしょう)というものがあります… 
 普通の狭心症は、“労作性狭心症”と言って、運動した後などに血管が相対的に狭くなって、心臓に十分な酸素供給ができない状態です。

しかし、「異型狭心症」は安静時に、血管がわずかに狭くなって、画像検査でもほとんど気付かれることがなく、症状だけが出るというものです… 
 ーー心臓神経症は身近な病気?

胸痛を訴える患者の半分程度は心臓神経症と示唆されることから、身近な病態、身近な症状だと言えます。

統計的には30代の若い方と50~60代の中年の方にピークがあります。

30代は女性の方が若干多いですが、受診した患者さんの比率が女性の方が男性よりも2倍程度多いということもあり、実際の数字はつかみにくいところがあります。
 
 
ーー若い女性に多く見られる理由は?

1つは、ストレスにより交感神経が緊張している状態が長いことが発症の要因として考えられます。

交感神経が強く興奮すると感受性が高くなるので、心臓のわずかな変化や動きが敏感に感じられます。そして痛みに意識が集中します。

若い女性の場合は、自分の健康に加えて、仕事や家族、子供の心配事、身体的な負担が大きい時期もあるので、ストレスを比較的溜め込みやすいと思います… 
 ーー発症頻度は?

「今日の臨床サポート」という書物によると、心臓神経症の発症頻度は不明ですが、代表的な類縁疾患である“パニック障害”は、生涯有病率で1~3%となっています。

もう1つ目安となるのは、胸痛で救急外来を受診する患者の17~25%は心臓神経症。また、循環器科を受診する外来患者の30~60%が心臓神経症やうつ病であると書いてあります。

よって、胸痛を訴える患者さんの30~50%は実際の心臓疾患ではなく、心臓神経症であったという報告です… 
 では日々の生活で何を心掛ければ良いのか。

伊藤院長は、血管収縮の原因となる、たばことカフェインの過剰摂取を控えた上で、バランスの良い食事と良好な睡眠が大事だと話す。
 
 
ーーたばこは影響する?

たばこを吸うと血管が収縮するので、心臓神経症、もしくは、異型狭心症になるリスクが増します。

また、コーヒーの飲み過ぎはカフェインによって過度に交感神経が興奮してしまい、心臓神経症の頻度が高くなると考えます。

一方、お酒は血管を拡張する要素なので、心臓神経症を起こすとは考えにくいです。しかし過度な飲酒は動悸など循環器に悪い影響を及ぼすので、適度に摂取することを勧めます…