どの種類の税にもメリットがあって、そのメリットがデメリットと隣り合わせになっている。 消費税は、お金持ちが課税対象となる資産額や所得額をどんなに小さく計上しようとしても、国内で買い物をしたら必ず払わなければならない。しかし、生活に困っている人も買い物をしたら必ず払わなければならない。 累進課税や資産課税は、特に裕福な人や巨大企業から多く取ることができるが、租税回避の手段も発達している。むろん相手が姑息だからといって違法でないものを罰したり、超法規的な手段で没収するのは権力の乱用で、立憲主義や法の支配の原則に反する。 だから、税の議論では、あいつはこの税に賛成しているから悪だ敵だというのではなく、どのような手段の組み合わせが最も合理的かを競い合うべきだ。
さて今の状況を見ると、景気の悪いときには増税しない、というのが鉄則だが、今の日本では景気がよいところとそうでないところの差が激しい。高級商戦が好調な一方で、数十円の差が文字通りの死活問題となる世界が広がっている。 これは、2014年から2019年の間に消費税は2度上げて5%から10%になったのに対し、ここ数十年間を通して特に裕福な人や巨大企業の所得や資産への累進課税や追加課税は進まず、むしろ減税すらされてきたことと無関係ではないだろうと思う。 私は消費税は必要だとの立場を取るが、消費税「だけ」上げるのは社会のバランスを損なうので間違いだと考えている。そろそろバランスを取るべきだ。最も先送りにされてきたことをまた先送りにしながら、消費税増税論に舞い戻ることは許されない。