#富野由悠季

たとえば女の子のお尻を追っかけてみるのもいいでしょう。
家族とじっくり話をしてみるのもいい。お父さん、お母さんとちゃんと話をしたことがありますか? あるいはおじいちゃん、おばあちゃんに若いころの話を聞いてあげてますか?そういった普通の経験をどれぐらいして、その中から何をつかむか、これが大事です。しょせんは人間の考え作るものだから、自分がどう生きて経験して感じているか、そこから実感として何をつかんでいるか、見てる人にどれだけその実感を訴えられるかが大事なんです。

経験を積むには思いきってひとり旅に出てみるのもいいだろうし、アルバイトで汗を流してみるのもいいでしょう。若いんだから、友達と悪いことをやってみるとか、無茶なことを試してみるというのも経験のうちです。要するに、ものをつくる気持ちがあるならば、アニメだけを見ていてはダメなんですよ。 アニメーションに距離をおくことが大事なんです」 

 #富野由悠季

アニメ現場見学ということは、制作志望と思われたのだろうか。 ファン活動セミプロ活動を通じて「研究」というようなことには中途半端な自信のあった私ではあったが、 制作側に回るという考えはなぜかなかった。そんな甘い考えで接触を持ったことに恥じ入りながらも、その立ちのぼるオーラとカリスマに圧倒される自分を感じざるを得なかった。 富野監督の言葉の奥からわいて出てくる「クリエイター」としての魂、信念、気迫に押されっぱなしであった。

家族とは何かと折り合いの悪かった自分。だが、いちばん身近な人間と話もまともにできないで、何をどう世に訴えるというのだろうか。「ザンボット」のストーリーラインに乗せて、そのことは主張されているではないか。そんな当然のことにも気づかなかった自分が恥ずかしかった。