岩波書店ヘーゲル全集の『精神現象学』の翻訳者、金子武蔵、なんと、あの鈴木商店(@神戸)の大番頭鈴木直吉の息子だった。
金子武蔵、妻は西田幾多郎の娘、和辻哲郎の後任として東大文学部倫理学教授、文学部長。この人、実存主義についても解説書を書いているが、今日から見ると、全く的を外している。また戦中・戦後の時局への関りも、控えめに言っても「あまり褒められたものではない」。
『精神現象学』の「翻訳問題」に関しては、ヘーゲルの原書がある意味、難解極まるものであるので、致し方なしと言える。そもそもドイツでも『精神現象学』の再読は20世紀になってから始まる。
これが仏に導入されるのは、サルトル、イポリット、メルロー=ポンティ世代。ただ、この当時はヘーゲルは仏の大学からは締め出されており、基本カント哲学(今でもやはり主流はカント)。
鈴木商店はWWIにおける戦争特需で急成長、売り上げは一時三井、三菱を大きく上回ったが、株式会社化を拒否し、系列銀行をもたなかったため、1927年昭和恐慌にて倒産(この時、止めをさしたのは三井)。
神戸製鋼、日商岩井(双日)、帝人、太平洋セメント、東圧、IHI、サッポッロ/アサヒビールなどが鈴木商店の後継企業。大方、鈴木を倒産させた三井系に回収された。