金子武蔵(1905年生)と同世代のヘーゲル研究者に早稲田の樫山欽四郎(1907生)がいます。
20世紀に入るまではヘーゲルの主著とされた『大論理学』、『小論理学』の訳者。岩波文庫訳がある『小論理学』は、『精神哲学』、『自然哲学』とともに『エンチクロペディ』のトリアーデの一環をなします。とにかく、ヘーゲルは「トリアーデ」に取り憑かれた哲学者。
平凡社ライブラリの『精神現象学』も樫山訳です。
兄は大阪の実業家でオンワードホールディングスの創業者。樫山奨学財団を設立(欽四郎は理事)。このオンワードホールディングスは1966年に本社を東京移転。その意味では関西経済の衰退の象徴の一つとも言えましょう。
ところで、この欽四郎の娘が劇団民藝の樫山文枝です。1966年のTVドラマ「おはなはん」で有名になり、67年の都知事選挙では美濃部亮吉とツーショットで写真に収まり、広報的に当選に貢献しました。今でも「改憲」反対の記事などでお見掛けします。
さて、父欽四郎の方は、研究者としては金子武蔵と同じくパッとしません。哲学研究としては京都学派の方が遥かに上です。
これはヒトラー・ユーゲント賞を貰ったことを生涯誇りにしていたハイデガー研究者川原栄峰と同僚、共訳なども出し続ける仲だったからなのか・・・